銀座でミツバチを育てるプロジェクト「銀座ミツバチプロジェクト」(中央区銀座1、TEL 03-3562-0126)は5月19日朝、紙パルプ会館(銀座3)屋上で今年11回目となる採みつを行った。
「もともと銀座は職人の町。消費だけでなく、銀座で採れたものを銀座の技術で生み出そう」(同プロジェクト田中淳夫副理事長)と昨年からスタートした同プロジェクトは、「銀座食学塾」と「銀座の街研究会」の有志が中心となり、銀座でミツバチを飼育している。同プロジェクトで採取されたはちみつを使ったスイーツは、松屋銀座(銀座3)、アンリ・シャルパンティエ銀座本店(銀座2)で発売されたほか、みつろうは銀座教会(銀座4)でキャンドルサービスに使用されるなど、初年度から注目を集めてきた。
当日朝9時から行われた採みつには、プロジェクトスタッフやサポーター、取材陣など約20人が参加。同日は途中から激しい雨や雷を伴い、羽などが濡れるためミツバチは「今日はちょっとご機嫌ななめ」(田中副理事長)という状況の中、3つの巣箱からはちみつ11キログラムを採取。同プロジェクトに飼育方法などを指導している養蜂家、藤原誠太さんの「弟子」でプロジェクトに協力している東京農業大学国際農業開発学科の福原保さんによると、この日のはちみつは「ユリの木(チューリップツリー)やミカンなどから採られたみつ」だという。透明度が高い金色のさらっとした感触で花の香りがし、口にふんわりと花の味が残る後味のよい甘さ。時期によっても異なるが、この日採れたものは糖度が76度以上ある「最上級ランクのもの」(田中副理事)。
銀座のミツバチ、通称「銀ぱちくん」は昨年3月28日から紙パルプ会館の屋上で生活を始め、同6月下旬までに約150キログラム以上のはちみつを生んだ。今年は3月18日に沖縄の西洋ミツバチが銀座に居を移し、現在は約12万匹以上が生活。5月中旬までの採みつ量はすでに昨年並みの量に達している。
同プロジェクトはもともと営利目的ではなかったが、「より安心して協力して頂きやすくするため」(同プロジェクト高安和夫理事長)、今年2月にNPO法人の認定を受けた。今年もスイーツやカクテルにはちみつが使用されているが、はちみつの販売は行っておらず、賛同した店舗がサポーターとなり直接はちみつを分けてもらいに来ている。個人でもサポーターになることは可能で、サポーターになると銀座産のはちみつを味わうことができる。
高安理事長は「一流の職人や店舗が生産に携わり、自分で取った蜜を使用し自分で製品を作る。なくなったら終わりなので、糖度を上げるためや持ちをよくするための『火入れ』を行う必要がない」とはちみつについて説明し、「銀座での初夏の風物詩として味わって頂きたい」と話した。
プロジェクト開始前、田中副理事長は屋上でミツバチを飼うことを同ビルのテナント1軒ずつに説明して回るなど心を砕いた結果、銀座では屋上菜園を作ろうとしていたビルが「ミツバチが来るなら」と屋上庭園へ計画を変更したり、三笠会館の調理場に迷い込んだミツバチをスタッフが「銀ぱちくんだ」と保護、無事外に放すなど、温かく見守られているという。「しかし、街中にミツバチが飛んでいることに懸念を示す方は必ずいらっしゃる。安全性などにもしっかり配慮して活動していきたい」と田中副理事長。また、プロジェクトを開始し「普段出会うことがなかった人たちと出会え、顔と顔が見える関係を築くことができた。ミツバチが人々に『受粉』するという思わぬ効果も」と笑顔を見せた。
新たな試みとして、同プロジェクト主催のオリジナル新作オペレッタ「オペラ the 銀座~銀ぱち物語~」が6月4日から「銀座 王子ホール」で開催されるほか、「ミツバチは黒くて光るものを攻撃する性質があり、隣の朝日稲荷で悪さをしていたカラスがいなくなったのはミツバチのおかげではないかと掃除をされている方から報告があった」(田中副理事長)ことから、絶滅危惧種の渡り鳥、コアジサシの営巣がカラスの被害に遭っているという大田区の「森ヶ崎水再生センター」へ、同プロジェクトのミツバチを「派遣」することも予定。
今年も6月末までの採蜜を計画している。