東劇(中央区築地4)で1月16日、シネマ歌舞伎「野田版 研辰の討たれ(のだばん とぎたつのうたれ)」公開を記念して、主演の中村勘三郎さんを招き舞台あいさつが行われた。
同作品は、木村綿花原作の歌舞伎狂言を勘三郎さんからの「依頼」で、野田秀樹さんが脚本・演出を担当。初公演は2001年8月で、2003年5月に歌舞伎座で「18代目中村勘三郎襲名披露狂言」として再演された舞台をHD高性能カメラで撮影し「シネマ歌舞伎」として制作した。
時代背景は江戸時代、赤穂浪士討ち入りの話題がもちきりの中、研屋あがりのにわか侍・辰次(中村勘三郎)を「親の仇」と国中を追いかける九市郎(市川染五郎)と才次郎(中村勘太郎)兄弟。逃げる辰次と追う兄弟の物語は「敵討を美化し熱狂する無責任な世界」や「それに翻弄(ほんろう)される人間の姿」が描かれた「笑い」と「涙」に包まれる喜劇。「終わったあと1キロ半やせる」(勘三郎さん)ほど、出演の歌舞伎俳優が舞台上を所狭しと駆け回るのが見どころ。映像と音響をリアルに再現し「臨場感を極力再現することを目指した」(同社)という。
勘三郎さんは「銀座で飲んでいた時、以前から脚本をお願いしていた野田さんに歌舞伎座の舞台を見せに連れて行ったらえらく感動していた」とエピソードを話し、映画に対しては「撮影が1回だけだったのでせりふを忘れていたりと、実は自分的にはできが良くない」と苦笑い。最後に「今生きている作家が演出した『今の歌舞伎』を高校生や歌舞伎の敷居が高いと感じる方にぜひ見ていただきたい」と話した。
今年8月には山田洋次監督、勘三郎さん出演で「シネマ歌舞伎『人情噺文七元結』」の公開を予定している。東劇での公開は2月1日まで。