銀座・金春通りで8月7日、通りを舞台に能楽金春流が演じられる「金春祭り」が開催された。主催は金春通り会と金春円満井会。
金春通りは、銀座8丁目の中央通りから1本西側に位置する通り。江戸時代に幕府直属の能役者を務めた家柄の一つ「金春」が現在の8丁目の一角に金春屋敷を設けていたことにちなむ名称で、通り沿いの銭湯「金春湯」にもその名がとどまる。1979(昭和54)年に同地域の約50店の店主が結成した「金春通り会」が命名した。
金春祭りは1985(昭和60)年にスタート。無くなっていたと思われていた金春稲荷(いなり)が、芸者の稽古場などがある「第2新橋会館」(銀座7) 屋上に移設されているのが見つかったことをきっかけに、金春稲荷の祭礼として開催。「650年の歴史を持つ日本の文化・能を継承していきたい」と、通りにござを敷き屋外で能が披露される。
28回目となった今年の演目は「延命冠者(えんめいかじゃ)」「父尉(ちちのじょう)」「鈴之段(すずのだん)」「弓矢立合(ゆみやのたちあい)」。いずれも1000年の古儀を誇る「奈良金春」独特の能楽という。
中央区の矢田美英区長が能奉行として「能楽始めませ」の合図を送ると、延命冠者と父尉がそれぞれ面を装着。白式の装束で狂言方が演じる「延命冠者」が披露され、同じく白式の翁装束に父尉の面をつけた「父尉」が「天下泰平」「国土安穏(あんのん)」を祈念。鈴を振って「五穀豊穣(ほうじょう)」を祈る「鈴之段」、三人大臣による「弓矢立合」と続いた。
会場となった路上には若者からお年寄りまでの幅広い年齢の男女が詰め掛け、着物や浴衣を着た人々の姿もあった。立ち見客に加え、約220人が特設席に座り、近くに置いたモニター前も約30人の人だかりに。それぞれ神妙な顔つきで能を鑑賞した。18時から始まった舞台が進むとともに徐々に日が沈み、終了したころには金春通りにひしめく多くの飲食店の看板の明かりがともっていた。