2006年、ファンに惜しまれながら入居する第二新橋会館の建て替えとともに閉店した四川料理「芝蘭(チーラン)」(中央区銀座7、TEL 03-3573-0301)が10月7日、同ビル8階にリニューアルオープンした。運営は北海道「四川飯店」、神楽坂「芝蘭」、銀座「芝蘭」の各オーナーが共同経営する桃園会(千葉県松戸市)。
オーナー兼料理長の下風さんは群馬県出身で、現在50歳。とある有名料理店で働き始めたのが18歳の時。当時、料理本を「買いあさっていた」下風さんは「あのころ、中華料理の本といったら柴田書店からしか出されていなかった。そこで知ったのが四川飯店(赤坂)の先代(陳建民)たちが書いた本。あこがれた」と当時を振り返る。本を熟知すればするほど「四川飯店に入りたい」という思いが膨らみ、希望をかなえたのは22歳の時。四川飯店の門をくぐることが許された。その後、陳健一さんなどと肩を並べ四川料理の追求に没頭。30歳で料理長、35歳のときには独立を果たし、板橋に本店「芝蘭」をオープンさせた。
「私はただ運が良かった。当時、『料理の鉄人』の放送が始まり、兄弟弟子の陳健一が私のことを番組で紹介してくれる機会が増えた。そんな時期と重なったもんだから運が良かっただけ」と笑って話す。ただ、「四川料理を伝えたい」という熱き思いはぶれることなく「独りよがりの料理ではいけない。お客さんと共有できるものでなければ料理は絶対ダメ」と確固とした意思を貫く。
建て替えのため2年間という期間限定店で銀座「芝蘭」をオープンしたのが4年前。銀座という土地柄「本物勝負がしたい」と四川料理のなかでも伝統的な古典料理のみを提供した。「本店が(評判が)それなりだったので、認知されるだろうと。甘かった」と当初辛い状態が続いたことも明らかに。その後「絶対人が入る」と確信し、ランチの導入を決定したのが功を奏した。ランチ時には行列が絶え間なく続き、またたく間に人気店へ。リニューアルオープン後の今は、ランチ時には4回転するほどの人気ぶり。「そのころのお客さんが覚えてくれていて、リニューアル後も来てくれるのはうれしい」とほおを緩める。ディナーは「まだまだこれから」だという。
店舗面積は38.5坪、客席数は40席。白を基調とした清潔感漂う店内は、赤色のライトヘッドやチャイニーズインテリアがアクセントとなりモダンな印象を与える。ターゲットは30代の若い女性に据えた。料理は「一菜一格」を掲げ、旬の食材を豊富に扱う。新たな試みとして古典料理に加え、下風さん自身が四川省成都を拠点に学んだ現代料理を提供する。四川料理は一般的に山椒や唐辛子などの香辛料を利かせた中華料理として知られるが、下風さんは「辛さだけに目をやるのではなく、素材の香り、料理の香りを楽しんでほしい」と話す。
ディナーメニューは、「どうしても日本で広めたい」とお墨付きの「当店自慢の四川ダック」(2,800円)や1カ月期間限定メニューが登場。10月の限定メニューは、「ヘルシーいろいろキノコ・四川香り鍋」(2,000円)、「活北海帆立の黄金ソース炒め」(2,000円)など5品目。コース料理も期間限定で、10月・11月は「陳麻婆豆腐コース」(5,250円)、「名物四川ダックコース」(8,400円)、「頂上ふかひれコース」(10,500円)など。ランチは3種(1,000円、1,200円、1,500円)用意し、メーンを麻婆豆腐や週替わりのおかずなどから選べるほか、ご飯・デザート・漬け物が食べ放題となる。客単価はディナー=7,000円、ランチ=1,200円。
銀座について、下風さんは「銀座のイメージは変わったが、それで良いと思う。銀座は季節感を感じるセンスの良い街。みんなで街をあげて残そうとしている」と話し、「銀座の客層は幅広い。この店に行きたいという目的店舗が多いのもそういう理由。お客さんの許容範囲が広い」などと触れた。今後「自分から動くことはない。店を維持し、お客さまのニーズをずっと追い求めていきたい」と抱負を述べる。
営業時間は、ランチ=11時~14時30分、ディナー=17時~22時。日曜定休。