波除稲荷神社(中央区築地6)で6月10日~14日、江戸時代より続く夏越し大祭「つきじ獅子祭」が開催され、最終日には「復活江戸の祭り」と題し、同神社に納める夫婦獅子を担ぎ築地を練り歩く祭礼が行なわれた。
3年ごとに開催する本祭と、その間2年にわたり行なわれる陰祭から成る同祭。今年は陰祭の年で、本来であればみこしだけが巡行する習わしだが、築地生誕350年を記念し、同神社に納める雄「天井大獅子」とお歯黒が特徴の雌「お歯黒獅子」の夫婦獅子が特別に宮出しされたため、多くの露店も出るなど、かいわいは例年以上のにぎわいを見せた。
14日9時30分、神社に最も近い町会「宮元」によって宮出しされた雄獅子は男衆、雌獅子は女衆によってそれぞれ担がれ同神社を出発。担ぎ手の掛け声や見物人からの声援などが飛び交い高揚した雰囲気の中、ゴールの同神社を目指し各町の担ぎ手が交代しながら時間をかけて練り歩いた。各町ではおはやしの音色が響き渡り、みこしを奉る御仮屋(おかりや)が設営され、ビル郡に囲まれた町内が祭りモード一色に染まった。
同祭の起源は一面の海であった築地が埋め立てられた今から350年前の1659(萬治2)年。雲を従える「龍」、風を従える「虎」とともに万物を一声で威服させる「獅子」の巨大な頭数体が奉納され、これを担いだのが始まりとされる。大正時代には約30対の夫婦の獅子頭が町内を練り歩いていたが、1923(大正12)年に起きた関東大震災で現存する金獅子を残し全焼し、それ以降はみこしだけの巡行が続いた。
今回、お披露目された獅子頭は1990年に納められた「天井大獅子」と2002年に納められた「お歯黒獅子」。石川県鶴来町の名工・知田清雲氏が手がけたもので、天井大獅子は樹齢3000年の黒檜(ねず)の原木を用い、高さ2.4メートル、幅3メートル、重さは1トン以上に及ぶ。
第七睦会会長の横井昭三さんは「昔は長屋だった場所にマンションやビルが建ち、『隣は何をする人ぞ』の時代。近所付き合いも減り人情が希薄になってしまった。防災や災害に備えても地域のつながりは必須。祭りを通して人づきあいや街の活性化につながれば」と期待を寄せる。