節分の2月3日、黒留め袖で邪気を払う年中行事「節分お化け」が銀座のクラブ各店で行われている。
節分は、暦の上で春がスタートする立春の前日。季節を分かつ節目には「邪気」が生じると考えられており、「邪気払い」の風習として豆まきや恵方巻きなどが一般的に知られている。「節分お化け」は節分に自分たちが「お化け」を模した衣装で邪気を払う風習。以前は町衆の文化として街中に根付いていたが、最近では花街にだけ残る文化となっている。
着付け師の藤田真由美さんは「年中で最も忙しいのがお正月、次は節分」と話す。藤田さんは銀座に近い新橋のヘアメークスタジオ「スタジオ匠」で、銀座のホステスを対象に着付けを行う着付け師。もともと銀座で6年間ホステスとして働き、誕生日や周年パーティー、年中行事などの際に着物を着用。「自分でも覚えよう」と興味を持ち、着付け師へと転身した。「着物の材質や襟の合わせ方、帯の選び方、結び方など、銀座には特有の着方が習慣として存在する」と藤田さん。最初は上手にいかずに泣きながら練習することもあったという。
銀座での節分お化けの定番装束は「黒留め袖」。黒留め袖は結婚式などで白の小物と合わせて着用するのが一般的だが、クラブのママやベテランホステスなどは節分に向け、黒留め袖を赤い小物と合わせて着用する。黒地に朱色の帯締めや帯揚げを合わせるのは「花柳界の装束を模しているのでは」。この日に地毛で日本髪を結うために髪を伸ばしたり、店によっては振り袖やコスプレ姿を披露したりするホステスもいるという。
藤田さんのスタジオには3日、通常の倍以上のホステスが着付けで足を運んだ。藤田さんはスタッフを増員し、1人当たり15分を目安に次々と着付け。「ホステスさんは突然の同伴でスタジオに駆け込むなど時間に負われている。早く着付けるのはもちろん、長時間持つこと、苦しくないことなどがポイント」
銀座のクラブ事情について、藤田さんは「銀座はいちげんさんを断る店も多いが、それはお客さんに安心して飲んでもらいたいという思いから」と話す。「いい服を着ているといいお客さんが付くともいうので、着物を着てどんどんいいお客さんを増やしてもらえれば」とも。