現代美術家・山口晃さんがメゾンエルメス(中央区銀座5、TEL 03-3569-3300)で制作中のびょうぶ作品「Tokio 山水(東京圖)」が8割程度完成した。
日本美術史と大和絵の技術を基に、日常と空想を織り交ぜた独自の作風を展開する山口さん。東京をモチーフにした作品制作は東京芸術大学在学中から続き、六本木の街並みを描いた「六本木昼図」や日本橋三越のポスターにも使われた「百貨店圖 日本橋 新三越本店」などの代表作で知られる。
これらに見られる鳥瞰(ちょうかん)の構図は、室町時代から江戸時代までに描かれた京都が舞台の風俗画「洛中(らくちゅう)洛外(らくがい)図」に着想を得たもの。中でも江戸時代初期に活躍した岩佐又兵衛が描いた洛中洛外図に「感銘を受けた」という山口さん。「Tokio 山水(東京圖)」は4曲1双のびょうぶ作品で、岩佐又兵衛の作品と同じ各隻縦162センチ、横342センチの大型サイズで展開する。
同館では8階・フォーラムを会場に、「東京」「望郷」をテーマにした山口さんの新作展「望郷-TOKIORE(I)MIX」を2月11日より開催中。同作は同展に向けて完成予定の作品だったが、間に合わずに未完のままで展示された。
山口さんは連日会場に足を運び、閉館後の場内で作品制作を続けている。作品の舞台は「江戸市中と等しい」という「山手線の内側」で、会場が構える銀座かいわいを中心に据え、上手には東京スカイツリーを、下手には東京タワー、新宿などをレイアウト。グーグルマップを参照した正確な構図も大きな特徴。そのほか、江戸~昭和まで6種類の地図も参照し、取り壊されたはずの歌舞伎座や江戸城もお目見え。山口さんの「個人的な記憶や思い込み」によって、東京の「過去」「現在」「未来」をダイナミックに「ミックス」する。
4月13日現在、作品は「8割程度完成している」と展覧会広報担当者。会期から約2カ月間に「現代アート好きの20代から日本画好きの年配の方まで」が訪れ、来場者数は約9800人を記録している。
「未完と言いつつも、展示作品と捉えている。細部を眺めていると、ふっと自分の意識の縮尺が変わって作品の中を散歩しているような気持ちになる。そういう気持ちを味わってもらいたいので、ぜひじっくり時間をかけてご覧いただければ」。完成については、「展示が終わるころまでには」とも。
開催時間は11時~20時(日曜は19時まで)。入場無料。5月13日まで。