東京国立近代美術館フィルムセンター(中央区京橋3)2階の大ホールで4月5日から、特集上映「生誕100年 木下忠司の映画音楽」が始まる。
同特集上映は今年4月9日に満100歳を迎える木下忠司さんが音楽を手掛けた480本を超える映画の中から、72作品(60プログラム)を上映するもの。
木下さんは1916(大正5)年、浜松市生まれ。武蔵野音楽学校(現・武蔵野音楽大学)声楽家を卒業し、終戦まで軍隊生活を送った後、兄の木下惠介監督の「わが恋せし乙女」で映画音楽家としてデビューした。
叙情的なワルツからシャンソン・マーチ・ジャズ・フラメンコ・流行歌・唱歌のアレンジまで幅広い曲調の音楽を手掛けた木下さん。「破れ太鼓」「女の園」「二十四の瞳」などの木下惠介監督作品のほか、川島雄三、小林正樹らの監督作品や、日本初の長編カラー・アニメーション「白蛇伝」、「日本侠客(きょうかく)伝 花と龍(りゅう)」などの任侠映画、「トラック野郎」シリーズなどの音楽を担当した。
「木下忠司さんといえば木下惠介監督の弟というイメージが強いかもしれないが、今回の特集はそこにとどまらず、木下忠司さんの幅広い業績を俯瞰(ふかん)する特集となっている」と話すのは、同センター主任研究員の冨田美香さん。
「中でも見ていただきたいのは、『おけさ姉妹』『伊豆の踊子』など、劇中で役者が主題歌を歌う、1950年代を中心に人気を博した歌謡映画というジャンル。当時の観客が、音楽と一体化した形で映画を楽しんでいたことを感じていただけると思う」とも。
木下さんの誕生日である4月9日には、自選の「破れ太鼓」と「涙」を上映。上映の間には、「木下惠介組」出身で忠司さんとも仕事をした作家・脚本家の山田太一さんと松本隆司さん(元・松竹映画録音技師)によるトークイベントも開催する。
入場料は一般520円ほか。月曜休館。6月12日まで。