来年3月の閉館が決まっている映画館「銀座シネパトス」(中央区銀座4)を舞台にした映画「インターミッション」がクランクインを目前に控えた9月18日、波除稲荷神社(築地6)で撮影前のおはらいが行われた。
メガホンを取るのは1962(昭和37)年生まれの樋口尚文さん。大学在学中に「ぴあフィルムフェスティバル」に入選し、1987(昭和62)年に電通に入社してCMプランナーとして活躍。現在も同社のクリエーティブディレクターを務める一方で、映画評論家としてキネマ旬報や朝日新聞などを中心に批評を寄稿している。
銀座シネパトスが「名画座宣言」した2009年より、旧作邦画の特集上映のプログラム編成などを担当してきた樋口さん。震災後の耐震性の見直しにより、同館の取り壊しが決まったことを受け、「シネパトスを舞台にした映画を私費で製作し、シネパトスのラストロードショー作品として公開したい」と発起。同館の鈴木伸英館長とも思いが一致したという。
来年3月末の閉館から逆算し、企画書の段階から知り合いの映画スタッフ、映画俳優らに「シネパトスのために一肌脱いでもらえないか」と声を掛けた。「映画少年時代からの憧れの映画スタッフ」から「インディペンデント映画のホープ」までの映画人が賛同し、俳優陣では秋吉久美子さん、染谷将太さん、香川京子さん、小山明子さん、水野久美さん、竹中直人さん、佐野史郎さん、佐伯日菜子さん、ひし美ゆり子さん、寺島咲さん、森下くるみさんなど総勢32人が「友情出演」を決めた。「映画界の既成概念ではあり得ない組み合わせ。奇跡の映画」(樋口さん)
舞台は「取り壊しが決まった銀座の古い名画座」。インターミッションとは大作映画の間に挟まれる休憩時間を示す映画用語で、同作はこのインターミッション中に展開されるブラックコメディーとなる予定。観客たちは「地震と放射能の心配で毎日モヤモヤしている」という設定で、秋吉さんが映画館の支配人クミコ役を、若手実力派・染谷さんが「年の差カップル」の夫・ショウタ役を演じる。「しみじみと閉館するのではなく、楽しく明るくお祭り騒ぎで見送りたい」と、「さまざまなジャンル映画から好きなものを集めたパフェのような映画」を目指す。
クランクインは9月23日。現在オフィシャルサイトでは、映画に出演するエキストラを募集している。上映は来年2月23日から3月31日を予定。