現代アーティスト杉本博司さんがポラロイドで捉えた光のスペクトルを、シルクスカーフ「カレ」に再現した「エルメス・エディター『影の色』杉本博司展」が11月15日、メゾンエルメス(中央区銀座5、TEL 03-3569-3300)8階・フォーラムで始まった。
記者会見に登場したピエール=アレクシィ・デュマさんと杉本博司さん
エルメスが現代アーティストと組んで、カレを制作するプロジェクト「エルメス・エディター」。2008年、オプアートの先駆けジョセフ・アルバースの生前の作品をモチーフにした「正方形へのオマージュ」を皮切りに、2010年には仏アーティスト、ダニエル・ビュレンヌさんによる「カレ:思い出のアルバム」を発表。ブランドを象徴するアイテムの一つであるカレにアーティストの「遊び心・革新性」を結合させ話題を集めてきた。
プロジェクト第3弾に登場した杉本さんとエルメスとの関係は2003年、メゾンエルメスでの杉本さんの個展「歴史の歴史」からスタートした。同展を通してエルメスの「手仕事へのこだわりに共感した」と杉本さん。「せっかくやるなら難しいプロジェクトをやってみようと思った」と笑う。
結果、カレの題材に選ばれたのが、杉本さんが手掛ける「影の色」プロジェクトからのポラロイド作品だった。「影の色」とは杉本さんのアトリエに差し込んだ光をプリズムに通して壁に映し出すプロジェクト全体への呼称で、杉本さんはこの光スペクトルを数年前からポラロイドで撮影。写真には、赤、黄、緑、青など波長の異なる光が繊細なグラデーションで移り変わっていく様子が捉えられていた。
モノクロ表現で知られる杉本さんからの提案が「カラーだったことに、まず驚いた」と、エルメスのジェネラル・アーティスティック・ディレクター、ピエール=アレクシィ・デュマさん。しかし「色彩が豊かで、作品の力強さが伝わってきた」。「難しい」とされるグラデーションの「完全な再現」を目指して、従来のプリンターとは異なる新たなプリンターを開発。今後はこのインクジェットプリンターで、「自然界のすべての色を再現できる」と自信を見せる。
カレは杉本さんとデュマさんが選出したポラロイド20枚を、7枚ずつ20パターンの限定エディションとして発表。光のスペクトルを「体験してもらいたい」と、140センチ×140センチの「大判サイズ」、インクが繊維の中まできれいに浸透する「薄さ」にもこだわった。一つのプリントをファイル設定するのにかかった時間は「3週間」とも。価格は7,000ユーロ(税・送料など別)で、特別サイトで販売する。
同展では、2010年のプロジェクト開始から2年を経て完成したカレと杉本さんのポラロイド作品を紹介。吹き抜けの天井高と透明感のある壁面から明かりが差し込む8階・フォーラムで、光を通して揺らめくカレを見ることができる。
展示期間は11時~20時(日曜は19時まで)。入場無料。12月31日まで。