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フィルムセンターで「映画監督・清水宏」特集-生誕110周年で

「不壊の白珠」

「不壊の白珠」

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 東京国立近代美術館フィルムセンター(中央区京橋3、TEL 03-5777-8600)で6月5日、「生誕110年 映画監督 清水宏」が始まった。

「蜂の巣の子供たち」

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 同監督は1924(大正13)年、21歳の若さで松竹から監督デビュー。役者の演技に頼った動きの少ない芝居中心の映画作りから脱却したモダンな感覚を持つ新進気鋭のスター監督として評価されるようになった。同監督は約35年間で164本の作品を監督したが、現存しないフィルムも多く、今回の回顧特集は上映可能な清水作品を可能な限り集めた41プログラム、50作品と過去最大規模の回顧上映になるという。

 上映するのは現存する中で最も古い清水作品となる「森の鍛冶屋」、菊池寛の通俗小説を映画化したメロドラマ「不壊(ふえ)の白珠(しらたま)」、川端康成の掌編を原案にした「有りがたうさん」、一般に知られる「朗らかな児童映画の監督」という同監督の一面を代表する「風の中の子供」、2008年に「山のあなた 徳市の恋」の題名でリメークされた「按摩(あんま)と女」、戦後、同監督が引き取って共同生活を送っていた戦災孤児たちが本人役で出演し、社会的に大きな反響を呼んだ「蜂の巣の子供たち」、そして1959(昭和34)年の遺作「母のおもかげ」など。

 同施設前に掲示されている上映スケジュールに熱心に目を通していた年配の男性は「私が小学生のころは、いい作品や子どもが主人公の作品が街の映画館に掛かると、先生が私たちを(映画館に)連れて行ってくれたので清水監督の作品はたくさん見ている。今回の回顧上映で、あのころ見逃した作品を見られるのが楽しみ」と、うれしそうに話していた。

 東京国立近代美術館フィルムセンター研究員の大澤浄さんは「黒沢明、溝口健二、小津安二郎ら、今も『別格』な存在として扱われる同時代の監督たちに比べ、清水宏は日本映画の揺籃(ようらん)期から戦後の黄金期までの商業映画の屋台骨を支えたにもかかわらず、現在の知名度からすれば『知られざる巨匠』と言える存在かもしれない。ドラマ的な起伏を削りリアリズムを前面に出す彼の作風は、一般には評価されにくい時代も長く、この特集で清水宏をようやく世に問えるという思いがある」と意気込む。

上映期間は6月5日~30日、7月9日~8月7日。月曜休館。入場料は一般500円ほか。上映スケジュールなどの詳細は公式サイトで確認できる。

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