東京国立近代美術館フィルムセンター(中央区京橋3、TEL 03-5777-8600)7階展示室で現在、「小津安二郎の図像学」が開催されている。
中国戦線から復員した時期に制作した自作の戦車の絵をあしらった手拭い
同展は「絵画の小津安二郎」「図案の小津安二郎」「文字の小津安二郎」「色彩の小津安二郎」「小津安二郎の映画美術―濱田辰雄の仕事」の5つの要素で構成されており、絵画、デッサン、本の装丁、広告ポスター、水彩画、書、俳画、セット写真、絵コンテ帖、スクラップブックなど97項目・約220点を展示。
これまであまり語られてこなかった、同監督の作品を支える視覚的要素、同監督の美的嗜好(しこう)を育んだ諸芸術、自身による巧みなアートワークに着目し、同監督の作品と実生活における絵画・デザイン・文字・色彩といったエレメントの重要性を示し、その「洒脱(しゃだつ)で軽やかな感覚」を明らかにしようとするもの。
会場では同監督自筆の「秋刀魚の味」の絵コンテ帖、「東京暮色」の直筆シナリオなどのほか、幼少期に描いた動植物の写生、中国戦線から復員した時期に制作した戦車の絵をあしらった手拭い、日本映画監督協会の会報の表紙のために描いた俳画「豆腐」、装丁を担当した「山中貞雄 シナリオ集」など同監督自身が手掛けたグラフィックを展示する。
また、脚本の野田高梧、撮影の厚田雄春といった小津組のスタッフの陰でこれまで比較的注目されてこなかった美術監督、濵田辰雄の業績を、未公開資料を通じて紹介する。
「秋刀魚の味」に使用されたセットの看板を再現し、小津映画独特のローポジションを体験できるコーナーも。
同センター主任研究員の岡田秀則さんは、「小津安二郎の美的感覚を示すさまざまな資料から、小津芸術の粋、色あせないモダニズムを感じていただければ」と話す。
期間中、トークイベントも開催。2月15日=日本経済新聞編集委員で「1秒24コマの美」の著者、古賀重樹さんによる「小津安二郎と美術」、3月1日=同センター研究員による「小津安二郎の映画美術―濵田辰雄の仕事」。
開室時間は11時~18時30分。入場料は一般200円ほか。月曜休館。