東京国立近代美術館フィルムセンター(中央区京橋3、TEL03-5777-8600)で5月30日、欧州連合(EU)加盟国大使館・文化機関が提供する各国の作品を上映する映画祭「EUフィルムデーズ2014」が始まった。
同映画祭は日本とEUの市民交流の促進を目的として毎年5月に行われる「日・EUフレンドシップウィーク」の一環として開催される催し。今年が12回目で、同センターの共催は2年ぶり7回目。期間中、23カ国の23プログラム、30本の作品を上映する。
EUが重視する「文化的多様性」が反映されたプログラムが上映されるということもあり、映画ファンだけでなく製作された国に興味を持つ来場者も多く、2011年、2012年は延べ8000人近い来場者を集めた。
同センター主任研究員の入江良郎さんは「EUフィルムデーズでは、昨今、日本では公開されにくいアートフィルムやナショナル・シネマ(国際市場よりも製作本国で高い人気を誇る)が多く公開される貴重な映画祭。『日本は世界中の映画が見られる国』と言われていたが、最近は外国映画の人気に陰りが見えている。日本公開がこの催しでの公開限りになってしまう作品も多い」と打ち明ける。
日本におけるアートフィルムや単館系映画の現状は厳しい。近年はインディペンデント系洋画配給会社の経営不振が目に付き、銀座でも昨年はミニシアター「銀座シネパトス」「銀座テアトルシネマ」が相次いで閉館した。
「大作映画やスター映画が主流の昨今だが、この映画祭ではそれらの映画とは違った良さを持つ、型にはまらない映画を楽しむことができる。この催しが新しい映画ファンが育つきっかけになれば」と話す入江さんのお薦めは、「クロワッサンで朝食を」が話題を呼んだイルマル・ラーグ監督の、日本初公開となる第2作「ケルトゥ/愛は盲目」や、同じく日本初公開で8月には日本でも一般公開されることが決定しているフィンランド映画「365日のシンプルライフ」など。
会期中、「アドリアナ」のペタル・ポプズラテフ監督と主演女優のイルメナ・チチコヴァさん、「オールディーズ・バット・ゴールディーズ-いま、輝いて-」のイジー・ストラフ監督、「365日のシンプルライフ」のペトリ・ルーッカイネン監督らによる舞台あいさつや質疑応答などのトークイベントも予定する。
「日本ではなじみのない国の映画を見る際に、文化的・歴史的背景を知ることで作品をより深く味わうことができるので、トークイベントには多くの方にお越しいただきたい」と入江さん。
入場料は一般520円ほか。月曜休館。6月22日まで。上映スケジュールやトークイベントについての詳細はホームページで確認できる。