プレスリリース

280km車いす行進が導いた法制定、WHO推奨の医療テック、沖縄発の障害主流化。 日本発の思想が世界を動かし、地域の未来を拓く力として還元。 第2回 「JICA国際協力賞」授賞式を開催

リリース発行企業:独立行政法人国際協力機構

情報提供:


受賞者を囲むJICA理事長 田中明彦(中央)、副理事長 宮崎桂(後列右2)、および選考委員の皆様

 独立行政法人国際協力機構(以下:JICA)は、卓越した国際協力の取組を通じて世界の経済社会課題に多大な貢献をされた個人・団体を顕彰する「JICA国際協力賞」の授賞式を1月21日(水)にJICA本部で開催しました。
 本年度は、「280kmの車いす行進」によるコスタリカの障害者自立推進法制定、WHO推奨を獲得し世界17カ国と日本の過疎地で母子を救う医療テック、そして自身の沖縄や国連などでの経験を背景に世界へ広めた「障害主流化」の推進の3組が受賞。理念を超え、具体的成果で社会を変える「国際協力のいま」を象徴する顔ぶれとなりました。

■ 日本と世界の未来を拓く「循環型のインパクト」
 今回の受賞案件に共通するのは、日本と世界の現場が互いに学び合い、実践の中で磨かれた成果が、世界にも日本にも活かされるという「循環」と「環流」のプロセスです。WHO(世界保健機関)による推奨や国連からの高い評価など、日本発の技術や取組が世界各地の現場で磨かれ、確かな成果として実証されました。これらの知見は今、離島など遠隔地医療や国内自治体における共生社会の条例化を支える力として日本各地にも還元されるなど、日本国内の課題解決を加速させる原動力ともなっています。
 授賞式の冒頭、田中明彦JICA理事長は、受賞者3組の活動について、「誰一人取り残さない社会をつくる」と、制度を動かし、命を守り、共生の仕組みづくりに貢献されたと称賛しました。また、こうした挑戦は「世界と日本の、平和と安定にもつながる重要なアクション」であるとその意義を強調、地球規模の課題が日本の暮らしにも影響を与える現代において、国際協力は日本の未来を守るためにおいても重要であると述べました。
 また、峯陽一選考委員長(JICA緒方貞子平和開発研究所 所長)は、協力成果を現地で発現させるとともに、当事者主導の制度改革や国際的な横展開、さらには、その成果の日本社会との「循環」・「環流」にも貢献していることは極めて意義深いとし、本年度の受賞者が持つ先駆性と、社会を動かす実行力などを高く評価しました。
 受賞者3組がいかに開発途上国の課題に向き合い、国内外での変革を成し遂げてきたのか。「誰一人取り残さない社会」への挑戦が私たちの未来をどう切り拓いているのか。 式典で行われたスピーチの要旨をご紹介します。

■受賞者紹介
1. 【制度制定への歩み】 コスタリカの「障害者自立法」成立に寄与したリーダー
ウェンディ・バランテス 氏(障害者自立生活センター「モルフォ」代表)
2歳で筋ジストロフィーを発症。2009年の来日JICA研修で、介助を得て地域で自立して暮らす日本の障害者の姿に触れ、母国での普及を決意。2011年に障害者自立生活センター「モルフォ」を設立。現在はラテンアメリカ14カ国の障害者自立生活ネットワーク代表を務め、障害者が「主体」となる社会変容を推進しています。

世論を動かした280kmの行進:
2016年、介助者派遣の公費負担を求める制度化を訴え、280kmに及ぶ車いす行進を実施。メディアを通じた広範な情報発信は国民の関心を呼び、同年の「障害者自立推進法」成立に向けた大きな潮流を形成しまし



車いす行進の様子(モルフォ フェイスブックより)

国際評価と日本への還元:
2023年、国際的に権威ある『Zero Projectアワード』を受賞。日本発の理念がコスタリカで結実したこの事例は、日本の自治体が『共生社会の条例化』を検討する際のモデルとして、日本の福祉政策を考える上でも示唆を与えるものとなっています。



Zero Projectアワードの様子(モルフォ フェイスブックより)


ウェンディ・バランテス 氏 スピーチ要旨:
「私たちの闘いは、人間として尊厳を持って生きるためのもの」
バランテス氏は受賞について、「この賞は、歴史的に疎外されてきた集団の存在と価値を認め、私たちが治療を待つ患者ではなく、社会を良くする力を持つ市民であることを証明するもの」と強調しました。「障害者自立推進法」によりコスタリカは後見制度を廃止し、個人の自律権や生き方を決める権利を制限する権限を、他の誰にも持たせないことを保障。いまその取り組みはラテンアメリカで広がり、8,000万人以上の障害者が自立した生活を送る権利を擁護するまでになったと自身の活動を振り返りました。
そして、「(誰も取り残さない仕組みづくりといった)インクルージョンが、目標ではなく当然のこととなり、障害のある人々がその制限を通してではなく、単に人間として認識されるようになるまで、私たちは努力を続ける。なぜなら、私たちの闘いは生き残るためだけでなく、すべての人間が受けるべき充実と尊敬をもって生きるためでもあるから」と熱い決意を表明しました。






2. 【地域医療を支える技術】 WHO推奨、日本発の技術が世界の母子保健に貢献
原 量宏 氏(香川大学名誉教授)/ 尾形 優子 氏(メロディ・インターナショナル(株)CCO)
モバイル胎児モニター(CTG)の基本原理を築いた原氏と、医療ITの旗振り役である尾形氏。離島や僻地で暮らす妊婦の不安を解消したいという想いから、遠隔地から胎児の状態をモニタリングできる世界初のフルワイヤレスモバイル胎児モニター「iCTG」を開発。世界と日本の「命の格差」を埋める活動を継続しています。

WHO推奨による信頼性の実証:
2022年、日本製のスマート医療機器として初めてWHO(世界保健機関)の推奨機器に選定。世界から選出されたわずか7製品の1つとして、ブータンやタイ、アフリカ・ラテンアメリカなど各国の医療インフラへの導入が進んでいます。



チェンマイでの運用状況

日本への還元:
世界で磨かれた信頼を、国内の離島・過疎地へ
世界17カ国の多種多様な現場で導入・活用され、WHOにも認められたこのシステムは、現在、香川、北海道、石川、千葉など国内の広範な地域へ展開されています。途上国の過酷な環境下で実証された汎用性の高さが、医師不足に悩む日本の自治体においても、妊婦さんがどこにいても安心して過ごせる地域医療の基盤を支えています。




iCTG


原 量宏 氏 スピーチ要旨:
「テクノロジーで挑むSDGsと周産期医療の国際貢献」
原氏は、国連のSDGs(持続可能な開発目標)目標において、世界の妊産婦死亡率と新生児死亡率の大幅な削減が掲げられている現状に触れました。その上で、日本の周産期医療は世界的に見ても優れており、テクノロジーを使って効率的に死亡率を減らすことが得意である。このノウハウをいかに途上国へ生かしていくかが重要だと、日本の役割について言及しました。






尾形 優子 氏 スピーチ要旨:
「手のひらの“i”が拓く、世界のどこにいても、安全に産声を上げられる未来」
続く尾形氏は、「日本の役割」を果たすための具体的な解決策として「iCTG」を紹介。iCTGは、胎児の心拍数と妊婦の陣痛を測定する携帯型の医療機器。在宅、救急車、助産院などどこにいても使用でき、データはリアルタイムでクラウドを介して遠隔地の病院や医師と共有されるとし、産科医が不足している地域や途上国でも、早期の異常発見と適切な分娩管理が可能になると強調しました。また、「iCTG」の「i」には、「IoT(モノのインターネット)」や「革新(Innovation)」に加え、「愛」、そして「私(I)」が変えるという意味が込められていると話しました。そして「この挑戦はすでに世界中で進んでいる」と語り、産婦人科医がわずか15人しかいないブータンで、JICAとの連携により全国的な医療ネットワークの構築ができた実績を紹介しました。日本の地域でお産を担う医療機関が激減している現状にも触れつつ、「世界を取り巻く環境は厳しさを増しているが、テクノロジーで世界の壁を越え、どこで生まれても安全に産声を上げられる未来を作り上げていきたい」と、今後の展望と決意を表明しました。






3. 【共生社会の実現へ】 「障害主流化」を国内外で推進する先駆者
高嶺 豊 氏(NPO法人エンパワメント沖縄 理事長)
17歳で車いす生活となった自身の歩みを原点に、ハワイで得た障害者の「自立生活」理念を携え沖縄から世界へ社会の変容を広げてきました。国連での活動やJICA専門家としての知見を融合させ、四半世紀以上にわたり国内外の障害者政策を牽引。障害者の声を「社会変革の主体」として生かしていくアプローチを、沖縄から全国、そして世界各地の現場へと普及させています。

世界各地で進む制度改善の支援:
2009年からJICA専門家として、現在も障害者の社会参加を促すカリキュラムを指導。遠隔助言や現地訪問を通じた継続支援により、2024年のコロンビアでの自立生活センター開所や、2025年のドミニカ共和国でのインクルーシブ教育支援委員会発足など、具体的な成果を次々と生み出す。



インド アンドラプラデッシ州訪問

沖縄県「共生社会条例」制定への寄与:
国際的な政策提言の知見を、自身の拠点である沖縄の地域福祉へも還元。2014年の沖縄県「共生社会条例」制定にも尽力、国際協力の知見を日本の制度設計にも活かす「環流モデル」を提示。



東ティモールの障害者と


高嶺 豊 氏 スピーチ要旨:
「沖縄での原体験が、開発途上国での共感を生んだ」
高嶺氏は受賞に際し、怪我により病院に閉じ込められる恐怖を抱いていた自分が、社会を変える担い手になれるとは想像もできなかったと、自身の軌跡を振り返りました。17歳での事故、車いす学生の受け入れ先が皆無だった時代の葛藤を乗り越え、米国で自立生活の理念を習得。国連職員としてアジア太平洋地域のバリアフリー基準を確立し、現在タイなどの都市インフラとして当時の取り組みが結実していることに感慨を示しました。
また、国連時代に主導した自助グループの育成やバリアフリー化の波が、今やアジア全域の制度として定着している実績に触れ、自身の国際協力の経験を沖縄に還元し、国内外で成果を循環させてきたことが今回の受賞に繋がったと述べました。「障害者の自立と社会参加の促進、そしてインクルーシブな社会の実現に少しでも貢献できるよう、尽力していく」と力強く語りました。






■独立行政法人国際協力機構(JICA)について
JICA(理事長:田中明彦、本部所在地:東京都千代田区)は、開発途上国が直面する課題を解決するため、技術協力、有償資金協力、無償資金協力など日本の政府開発援助(ODA)を一元的に担う二国間援助の実施機関で、150以上の国と地域で事業を展開しています。 国際社会の課題は日本とも密接に関係しています。国内外のパートナーと協力してそれらの解決に取り組み、世界の平和と繁栄、日本社会の更なる発展に貢献します。詳しくはhttps://www.jica.go.jp/index.htmlをご覧ください。

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