木挽町通り「銀座 越」が閉店-26年の歴史に幕、母の介護で北海道へ

山形県産アスパラを振る舞う店主・橋本スミ江さんと常連客の皆さま。店内は終始、笑いに包まれていた

山形県産アスパラを振る舞う店主・橋本スミ江さんと常連客の皆さま。店内は終始、笑いに包まれていた

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 歌舞伎座横、木挽町通りの銀林ビル2階の大衆割烹「銀座 越」(中央区銀座4)が8月7日に閉店し、常連客らが最後の別れを惜しんだ。

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 店主・橋本スミ江さんは26年前に北海道・恵庭(えにわ)市から上京、新橋・烏森神社横に同店の前身となる「新橋 越」をオープンさせた。実兄を板前として迎え入れ二人三脚で切り盛りしてきた。21坪の店内には常連客が毎晩押し寄せ満席の日が続いたという。その店を「年もとってきたし、もう少し狭い店が良い」という理由で同所に移転したのが2年前。カウンターとテーブル席、奥に座敷を配した13坪の店舗が越さんの「第2のステージ」となった。

 順調だったのも束の間、調理を手伝ってくれていた兄が病で倒れた。それ以来1年8カ月の間、橋本さん一人で店を切り盛りしてきた。「新橋の時よりメニューを減らし、わたしが作れる料理をお出ししていた。それでも通って来てくださるお客さまがいたのはありがたかった」と振り返る。閉店理由も地元北海道で一人暮らしをする母(91)の介護で、26年間の割烹人生に幕を下ろし地元へ戻るためだった。「最近ニュースで話題になっている実の両親の所在が分からないなんて考えられない。当たり前の決断。悔いはない」という。

 最終日に集まったのも新橋から橋本さんを追っかけ「流れてきた」常連客がほとんど。「半年前から予約しないと入れなかった。いつも友人と待ち合わせしていた」と振り返るのは高校の同級生同士で通っていた横浜市の酒井さんと船橋市の鈴木さん。「ママはいつも『お帰りなさい』と言って迎えてくれた。介護が一段落したら『またお店するの~』と連絡があるような気がする」と閉店を惜しんだ。

 人気メニューは「じゃが明太」「北海たまご焼き」「自家製がんもどき」のほか、冬季限定「鴨のじぶ鍋」など。「ママの声を聞くと落ち着く。ママとママの料理が好きで通っていた」(松戸市の小林夫妻)や「新橋に4年間通った。同窓会している人たちの姿を見かけた」(大田区の林さん)などの声が聞かれた。

 幼少のころから働く母の姿を見続けた橋本さんの息子・竜一さんは「越境して中央区の小・中学に通っていた。学校が終わるとしょっちゅう店に来てご飯を食べていた」と当時を懐かしんだ。

 感謝の言葉や常に明るい表現をやわらかいトーンで伝える橋本さんはまさに常連客の「アイドル」。最終日は夜が深く更けるまで常連客たちが集い最後の別れを惜しんでいた。

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