銀座の書店「教文館」(中央区銀座4)2階の美術書コーナーで、書籍「かわいい江戸絵画」の売れ行きが好調な滑り出しを見せている。
教文館・2階の美術書のコーナーに並ぶ書籍「かわいい江戸絵画」
同書は、今年春に府中市美術館で開催された「かわいい江戸絵画」展のカタログを書籍化したもの。同展は江戸絵画を「かわいい」という視点で切り取った斬新さが好評で来場者は2万人を超え、カタログも会期終了前に完売。入手できなかったファンから「幻の図録」と呼ばれ、展覧会終了後も再発売の要望が多く寄せられたという。これを受けて芸術書の出版社である求龍堂(千代田区紀尾井町)が一般書籍として刊行。同館ミュージアムショップと全国の書店で発売することになった。
収録している図版は、尾形光琳「布袋図」、狩野惟信「菊慈童図」、伊藤若冲(じゃくちゅう)「托鉢(たくはつ)図」、白隠慧鶴「すたすた坊主図」、俵屋宗達「犬図」、与謝蕪村「狗子(くし)図」、森狙仙「鹿猿猴図」、歌川国芳「猫のすずみ」、円山応挙「狗児(くじ)図」など。カラー図版約150点を掲載し、総ページ数は248ページ。
求龍堂顧問の谷合正城さんは「書籍化にあたっては展覧会開催直前に発見され、図録未収録だった伊藤若冲の『河豚(ふぐ)と蛙(かえる)の相撲図』、展覧会終了後発見の『河豚図』、上田公長の『狐の嫁入り図屏風(びょうぶ)』を加え、十数点のカラーを新撮した。ほかにもレイアウトや解説、色調を修正するなど、全面的に見直した。巻頭論文2本も、担当学芸員が会期中に実物に触れて発見した新たな知見を加えて書き直されたので、内容はさらに充実し、多くの江戸絵画ファンに満足いただける仕上がりになっていると思う」と自信を見せる。
同展にも興味を持っていたという教文館和書部の永井将史さんは今回の書籍化に注目。「平置き」にし、POPを飾るなど、売り場づくりにも力を入れた。
「本書からは現代的に言えば『ヘタウマ』的、『漫画』的とも言える要素を、その時代の人々が楽しんで見ていた様子がうかがえる。若冲、応挙といった江戸時代の巨匠の作品の中に『かわいい』を発見した新たな視点が、この書籍が老若男女に注目される理由なのでは」と永井さん。
仕様はB5変形。価格は2.940円。