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フィルムセンターで増村保造特集-若尾文子さんのトークイベントも

「刺青」(1966年)撮影現場での増村保造監督

「刺青」(1966年)撮影現場での増村保造監督

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 東京国立近代美術館フィルムセンター(中央区京橋3、TEL 03-5777-8600)で6月24日、特集上映「映画監督 増村保造」が始まった。

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 増村監督は1947(昭和22)年、大映東京撮影所に助監督として入社。ローマの国立映画実験センターへの留学や溝口健二、市川崑作品の助監督を経て1957(同32)年に監督デビュー。大映の永田雅一社長にもその手腕を高く評価され、同社が倒産する1971(同46)年までに48本、生涯では57本の作品を監督したほか、テレビドラマでも多くの監督・脚本作品を手掛けた。

 同センター研究員の大澤浄さんは増村監督について「登場人物が社会的成功や恋愛といった欲望を激しい自己主張と共に追求する描写は、従来の日本映画にはなかった。さらにそうした人物たちを画面いっぱいに押し込めるような密度の高い画面設計やきびきびとして緩まない編集により、スピーディーかつダイナミックに物語を語った。戦後の新しい世代を代表し、21世紀の現在でも全く色あせない現代性を持っている」と話す。

 今回の特集では、日伊合作で現在は上映プリントの所在が不明の「エデンの園」を除く同監督の全映画作品にテレビドラマの「原色の蝶は見ていた」を加えた57作品を上映する。

 今回の上映作品の中で大澤さんが薦めるのが1961(昭和36)年に製作された「妻は告白する」。

 「増村監督と若尾文子さんによる代表作で、両者にとってキャリアの転機となった作品でもある。撮影初日、増村監督は若尾さんの芝居を動作が遅いとして撮り直しをしたが、しばらくたってから若尾さんの最初の芝居の方が良いと告げたという。俳優の動作に細かく厳しい指示を出すことで知られる増村監督を納得させる芝居をしようと、若尾さんが事前に脚本を入念に読みこんで準備した結果だった」

 ほかに、「落ち目のチンピラたちが旅芝居一座となって生きる道を見つける青春群像劇。前半は増村監督が敬愛する黒澤明監督の『七人の侍』を思わせ、エネルギーを持て余す若者たちが芝居に次第にのめりこんでいくさまが躍動的に描かれる」という「ぐれん隊純情派」や、「増村=若尾コンビのもう一つの代表作で、全編に緊張感が張り詰めた白黒映画の傑作。妻の夫への愛という一見ありふれた感情が妥協なく貫かれることによって驚くべき物語的展開が生まれ、さらに、巨大な社会的暴力としての戦争が批判されるまでに至る」という「清作の妻」もお薦め作品に挙げる。

 7月5日には今回の特集上映で出演作品20作が上映される若尾さんをゲストに迎え、共同通信編集委員の立花珠樹さんが聞き手を務めるトークイベントを開催する。

 入場料は一般520円ほか。月曜、8月11日~18日休館。9月7日まで。上映スケジュールやトークイベントなどの詳細は同センターのホームページで確認できる。

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