東京国立近代美術館フィルムセンター(中央区京橋3)で3月17日、「自選シリーズ 現代日本の映画監督3 井筒和幸」が始まる。
同シリーズは、1980年代以降の日本映画をけん引してきた映画監督に自作の中から上映作品を選定してもらい、その足跡をたどることによって現代日本映画の原点を探ろうとする試み。
同センター事業推進室研究員の佐々木淳さんは「本シリーズではその監督のフィルモグラフィーや仕事が『日本映画のここ30年』を反映している作家を採り上げている。井筒監督はプロの映画監督になりたくてピンク映画の現場に飛び込み、一般映画の監督となってからもメジャー会社からのお仕着せの企画とはあえて距離を置き、70~90年代の日本映画界に新風を吹き込んだ会社と組むなどして、数々の傑作をものにしたというところが、このシリーズにふさわしい」と話す。
今回の特集上映では同監督初の一般映画である「ガキ帝国」をはじめ、「犬死にせしもの」「岸和田少年愚連隊」「パッチギ!」など12プログラム、15作品を上映。
「井筒作品は予定調和の心地のいい物語ではないが、人生の真実を感じさせる刺激的なドラマが描かれ、70年代のアメリカン・ニューシネマにも通じる青春の哀愁や、俳優たちの魅力が色濃く漂ってくるところが魅力」と話す佐々木さん。
「70年代の演劇ファンに絶大な人気を誇った『劇団日本維新派』(現・維新派)の1979(昭和54)年の野外公演を井筒流に記録した伝説的ドキュメンタリー『足乃裏から冥王まで』はビデオ化・DVD化ともされておらず、演劇ファンも映画ファンも必見。辛口コメンテーターとしても知られる井筒監督の本音がさく裂する、痛快かつヘビー級の15本を、ぜひ大スクリーンでお楽しみいただければ」と来館を呼び掛ける。
3月21日と28日には同監督によるトーク・イベントも予定。
入場料は一般520円ほか。月曜休館。今月29日まで。