世界初蚕品種「プラチナボーイ」新作発表-呉服店・銀座もとじ

3回の脱皮(三眠)で糸を吐き始める生育期間が短い蚕「三眠蚕(さんみんさん)」とその繭。プラチナボーイのなかでも稀少で今年初めて生産された

3回の脱皮(三眠)で糸を吐き始める生育期間が短い蚕「三眠蚕(さんみんさん)」とその繭。プラチナボーイのなかでも稀少で今年初めて生産された

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 銀座の呉服店「銀座もとじ」(中央区銀座4、TEL 03-5524-3222)は10月3日、時事通信ホール(銀座5)で「プラチナボーイ」新作発表会を開催した。

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 プラチナボーイとは、オスの蚕(カイコ)から取った糸で、その名の通りプラチナのように美しい光沢を持つ国産の蚕品種。オスの蚕は卵を産むメスとは異なり、20%ほど多く絹を生産し、糸も細く長いのが特徴。世界中の研究者が開発を競い合うなか、大日本蚕糸会・蚕行技術研究所の大沼昭夫博士を中心とする研究者らが37年の研究の末、2007年3月、世界初となる開発に成功した。

 同社は「プラチナボーイ」の繭からとれる貴重な糸を「最高のかたち」にして世の中に送り出したいと繭からのプロデュースを決意、信頼する養蚕農家、製糸、製織、各地のつくり手とともに歩み始めた。大日本蚕糸会草野常務理事は「研究の成果が世に出るということはとても稀なこと。消費者に一番近い方が努力をしないとコストの関係で難しいのが現実」と話した。

 レセプションで登壇した同社泉二弘明(もとじこうめい)社長は「日本の絹の95%がブラジルや中国産というなかで、日本の養蚕農家を存続させ日本の絹を守りたい」と話し、「プラチナボーイの糸を使った結城紬や大島紬を養蚕農家へ見せに行ったところ『初めて自分の作った糸でできた着物を見た』と涙を流して喜ばれた姿が忘れられない」と「顔の見えるものづくり」への思いを語った。

 今回発表されたのは、同社が「銀座」をテーマに「プラチナボーイ」を使った作品を依頼した16人の作家作品。肩と裾に高層ビルの窓とも銀座の石畳ともいえる柄が染められた岩井香楠子さんの型絵染着物「銀座ものがたり」(75万円)や、朝日を珊瑚の砂染めで表現した益田勇吉さんの大島紬着物「黎明」(78万円)、銀座の柳を題材とした西澤幸雄さんの東京手描友禅着物「銀座の柳」(75万円)など。

 今年から着物を別注する際に、養蚕農家を訪問するなど「一からのものづくり」(同社)を体験できる「究極の」(同)オーダーも受け付けるという。同社長は「糸からのこだわりで本当に良いものをつくろうとする考えが養蚕農家の方にも伝わり、『もっと良いものを作ろう』という考えに賛同していただくことができた。銀座という街は着物がよく似合う。洋服を極めた30~40歳代の方々に最大の自己表現の方法として着ていただければ」と期待を寄せる。

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