東日本大震災の避難所の一つとなっている福島市の土湯温泉で5月4日、銀座のママやバーテンダーらが福島産イチゴや銀座産ハチミツを使ったカクテルを振る舞う「出張バー」イベントを開いた。
主催は地域イベント「ファーム・エイド銀座」を手掛けるNPO法人「銀座ミツバチプロジェクト(以下、銀パチ)」(中央区銀座3)で、銀座のバーやスナックなど約1,700店の会員店舗を抱える「銀座社交料飲協会(GSK)」(銀座8)と共同で企画した。銀パチ理事長の高安和夫さんや、GSK理事を務める「クラブ稲葉」のママ白坂亜紀さんらが「飲みながら」相談する中で、「銀座で働く私たちができるのは、お酒を振る舞うこと」と意気投合。つながりのある飲食店舗に声を掛け、銀座のバーテンダーやママなどの「プロ」やボランティアなど約30人が現地に赴き、福島で酒を振る舞う「銀座流のおもてなし」が実現した。
場所は南相馬市や浪江町からの避難者らが集まる福島市土湯温泉町。土湯温泉観光協会前に特設カウンターを設け、銀座産ハチミツを使ったカクテル「ハニーハイボール」や、福島産生トマトを絞ったブラッディマリー、福島産イチゴを使ったフローズンカクテルなど約2,000杯を無料提供した。
会場では子どもから大人まで幅広い男女がカクテル、ジュースを求めて行列を作り、繰り返し並んで「ご機嫌」な笑顔を見せる人の姿も。コップを片手に車座で談笑していた男性5人は「(私たちは)バラバラにここに来た。家がある人もない人もいるが、避難生活の中で一緒に飲んで仲良くなった」と話し、ブラッディマリーを飲んだ60代女性は「初めて飲んだが、ほろ苦い。酔っ払ってしまうと困る」と言いながら笑顔を見せた。
隣のブースでは、土湯温泉女将(おかみ)会のメンバー6人がピンクのジャンパー姿でとん汁を提供。150人が避難生活を送る「山水荘」の女将は「今回は銀座のみなさんに来てもらった。今度は福島のフルーツを持ってキャラバンを組み銀座にも行きたい」と話す。
イベントを終え、白坂さんは「避難生活を送る方々に着物姿でお酒を振る舞ってもいいものか、ぎりぎりまで悩んだ。子どもたちもたくさんいて、子ども用カクテルもその場その場で必死に考えて作った。結果的にはたくさんの人に『ありがとう』と言ってもらえた」と振り返った。高安さんは「銀座は飲食の街。風評被害については福島の皆さんからの期待も感じた。銀座を復興支援のモデルとして、元気を発信していきたい」とも。