ニンジンをニンジンで、パンを小麦粉で、コーヒー豆をインスタントコーヒーで、お地蔵さまを石で描く渡辺哲也さんの個展「MATERIAL ARTS-素彩画展」が3月23日、銀座・伊東屋(中央区銀座2、TEL 03-3561-8311)9階ギャラリーで始まった。
渡辺さんは1955(昭和30)年愛媛県出身。1974(昭和49)年に建築設計事務所へ入社以来30年以上にわたって主に建築設計・建築パースなどのレンダリング業務を手掛け、1991年に独立。三重県に渡辺建築事務所を構える。
仕事と並行し、水彩、アクリル、ペンシル、マーカー、インクなどさまざまな「既成絵の具」を使って絵の制作を続けてきた渡辺さん。「新しい領域にチャレンジしたい」との思いが強まり、2009年ごろから「身の回りにあったもの」を使って絵の具を自作し、その絵の具を使って素材の絵を描く「素彩画」を制作するように。
モチーフとなるのは、玉ネギ、ニンジン、ブルーベリーなどの植物から、石、れんが、ブロンズまで幅広い素材。ニンジンでは、おろし器ですり下ろしたミニキャロットを茶こしで搾り取り、ろ過。色素を定着させる「媒染剤」と組み合わせるなど工夫を凝らし、同様に作った葉の絵の具と共に作品「ミニキャロット」を完成させる。
フランスパンを描く際にはパンの材料である小麦粉に着目。水を混ぜただけでは「塗れない」小麦粉を焙煎(ばいせん)し、焼き上げたフランスパンを表現する茶系の絵の具に仕上げる。そのほか御影(みかげ)石をハンマーやすり鉢などを使って粉にした「岩絵の具」で描いた「お地蔵さん」、インスタントコーヒーを使って描いた「珈琲豆」も。
会場では「素彩画」46点を、言葉や写真で製作過程を紹介する「メーキング」と共に展示。自作絵の具の実物や、ワイン絵の「経時変色」写真なども取りそろえ、独自のアプローチを紹介している。
「コンセプトは『素材で作品に命を与える』。ドングリ、松ぼっくり、屋根瓦、炭…好奇心のおもむくままに身近ないろいろなものを素材にしているので楽しんでもらえたら」と渡辺さん。
開催時間は10時~20時(日曜・祝日は19時まで、最終日は18時まで)。入場無料。4月1日まで。