銀座・和光本館(中央区銀座4、TEL 03-3562-2111)は現在、6月10日の時計塔竣工(しゅんこう)80周年を目前に控え、一般参加者がディスプレーの一部になる「ショーウインドー体験企画」を実施している。
東西南北に文字盤を有する時計塔を屋上に据えた和光本館は1932(昭和7)年6月10日、服部時計店(現・セイコーホールディングス)として完成。昭和初期の銀座を代表する建物として知られた。連合軍による進駐時にはP.X.として接収されたが、1952(昭和27)年に接収が解除されると、 建物正面はショーウインドー機能を再開。「銀座の顔」として華やかなディスプレーで街を彩ってきた。
和光では5月から、時計塔竣工80周年・和光のショーウインドー60周年を記念して、「ショーウインドーの過去・現在・未来」をテーマにウインドー企画を展開。「あなたが考える未来のショーウインドー」をテーマにウインドーデザイン案を公募した5月に続き、6月に入り6階・和光ホールでウインドー展を開催。亀倉雄策や伊藤憲治など昭和期に活躍した気鋭デザイナーらが手掛けてきた「過去」のディスプレー約80点をパネルで紹介している。6月11日まで。
ウインドー体験は、「ここにあるウインドーを使って、『今』を感じられる企画を」と発案した。コンセプトは「1分間、あなたが銀座4丁目の顔になる」で、参加者は実際にショーウインドーの中に入って、ディスプレーの一部として光の演出を体験することができる。
7日19時30分には、集まった参加者が次々とウインドーから登場した。ウインドー内にはトルソー8体を配置。参加者が間に入ってトルソーと手をつなぐと、時計などをモチーフにしたライトアップがスタートした。
同日参加したのは、夫婦、親子、兄弟、友人同士など10組。手をつないで登場した老夫婦は、長女が「ドッキリ」として予約したという。長女は「銀座はいつも2人がデートで使う場所。間もなく結婚50周年を迎えるので記念になればと思った」と話し、夫婦は「まさか自分が入るとは思っていなかったので驚いたが、思ったよりも人の顔や銀座の風景がよく見えた」と笑顔を見せた。
同日が56歳の誕生日だという男性は夫婦で参加し、続いて3人の息子たちもウインドーに登場した。兄弟の手には「父と母のおかげで僕たちがいます」というパネルも。「いつも仕事で前を通っていて、参加の呼び掛けを知った。この場所は日本一のショーウインドー。入ってみるなんて考えられなかった。やって良かった」(男性)。これから銀座で誕生会を開くという。
同社宣伝販促部の安西美幸さんは「(企画に際して)私たちもウインドーの中に入ってみたが、これまで飾られてきたオブジェたちがこういう風に見られていたんだということが分かってとても意味があった。初の試みで手探りだったが、参加された皆さんには想像以上に楽しんでもらえて、うれしい」と話す。
時計塔竣工80周年を2日後に控えた和光。「時計塔はこの場所に構えて80年、街の皆さんに見守られながらここまで来られた。今後のディスプレーでは、社会的に意味のある、街の役に立てるようなものを発信し続けていきたい」と安西さん。
ウインドー体験は今月10日まで実施(予約受け付けは終了)。各日19時30分から30分程度。