銀座シネパトス(中央区銀座4、TEL 03-3561-4660)で6月13日、今年4月に亡くなった田中好子さんの特集上映「スーちゃんへ 微笑みがえし」が始まった。
1956(昭和31)年東京生まれの田中好子さんは、アイドルグループ「キャンディーズ」の一人として1973(昭和48)年に歌手デビューするも、人気絶頂だった1978(昭和53)年に解散。1980(昭和55)年の芸能界復帰後は女優に転身し、テレビドラマ、映画などで活躍した。1992年に乳がんが見つかり、女優業の傍ら闘病生活を続けたが今年2月に亡くなった。
田中さんの訃報の後、東日本大震災を皮切りにした原発問題を受けて企画したという同上映会。同館支配人の鈴木伸英さんが「とにかくみんなに見てもらいたかった」と話すのは、今月18日から上映する「黒い雨」(1989年、今村昌平監督)。
「黒い雨」は、日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した田中さんの代表作。広島の原爆投下による被爆をテーマにした井伏鱒二の同名小説を映画化した作品で、放射能汚染問題に深く斬り込む。田中さんは同作で原爆症の表現のためにヌードを披露するなど、体当たりの演技で「女優魂を見せつけた」(鈴木さん)。
田中さんの女優としてのデビュー作で、カツオの一本釣り漁の舟に乗る少年と少女の青春を描いた「土佐の一本釣り」(1980年、前田陽一監督)は、今月25日~来月1日に上映。「普通の女の子に戻りたい」との解散宣言を受けた田中さんの芸能界復帰に対して、「当時は『どうして?』という半ば攻めるような反応が多かった」と鈴木さん。「実はガンで亡くなった弟さんが、田中さんがテレビに出ているのを楽しみにしていたことを受けての復帰だった。そこから女優に徹した田中さんの覚悟は見どころで、黒い雨とデビュー作には女優・田中好子が集約されている」
そのほか、キャンディーズ時代にカメオ出演した「ザ・ドリフターズの極楽はどこだ!!」(1974年、渡邉祐介監督)、「ザ・ドリフターズのカモだ!!御用だ!!」「正義だ!味方だ!全員集合!!」(以上1975年、瀬川昌治監督)の3作も上映する。「キャンディーズのスーちゃんは笑顔のはじける明るいイメージだった。女優になった田中さんとの違いは見どころ」と鈴木さん。
上映は1日1回、20時30分から。鑑賞料は一般1,300円など。7月15日まで。